CDC(国立疾病予防センター)レポート

溺水について

今回は、これから夏にかけて多く見られる溺水事故について考えてみたいと思 います。溺水事故は日米両国において、先月お話しました交通事故に次いで多くみられる事故で、日本では1999年に234人、アメリカでは1998年に1003人の子どもが水に関係する事故で死亡しています。 溺水には年齢的な特徴があり、乳幼児は家の中で、幼児から学童期にかけては 家の外で多くみられます。 家の中でもっとも多いのが風呂での事故です。これはお風呂に残り湯をする習 慣がある日本で多く見られる事故なのですが、保護者が目を離したほんのちょっとの間に一人で風呂場に入ってしまい、浴槽に転落し、浮かんでいるのを発見されるという例です。伝い歩き、一人歩きが出来る乳幼児は好奇心も旺盛で、一人でどこにでも行ってしまいます。また、乳幼児はまだ頭部が大きく重いので、身体の重心が大人より高く、浴槽の淵からのぞき込むと転落する可能性が高いのです。このような事故防止のためには、風呂場の扉に外からかけることのできる鍵をつける、残り湯をしない、洗い場から浴槽の高さを50cm以上にする、風呂のふたを固いものにするなどの対策をたてる必要があります。

家の外ではプール、海、湖などでの事故が多く見られます。特にアメリカでは子どもの溺水事故の大半は自宅のプールで起きています。これらの事故を防ぐにはプール周辺には柵を設置する、プール使用時以外はプールに網をかけるなどの対策があります。海や湖などの自然水域で泳ぐときは、ライフジャケットを着用する、安全が確認されている水域のみで泳ぎ、遊泳禁止水域では絶対に泳がないように指導する、保護者が必ず付き添うことなどが大切です。そして、水にはいる前には準備運動で十分に身体をほぐし、水の温度、深さ、危険物の有無等を確認してから入るようにしましょう。 また、小さな子どもではバケツ、洗濯機、水たまりなどの水深が10cmもない環境でも溺れる可能性があるので十分な注意が必要です。

もし溺れている人を見つけたら、大声で周りの人に知らせ助けを呼ぶと同時に、溺れている人が岸から比較的近い場合は、動かないものに確実につかまりながら棒状のものを差し出して助けます。岸から離れている場合は、浮き輪やロープなどを投げて助けます。泳いで救助する場合には、出来るだけ衣服を脱いでから入水し、溺れている人の背後から近づき、溺れている人が仰向けになるように首に腕を巻きつけて岸へ運ぶようにします。しかし、溺れている人はパニック状態になっているので、自分も泳いで救助する場合は熟練と慎重さを要します。 そして予防策、救助法とともに、水から引き上げた後の処置法を学んでおく必 要があります。溺水者を救助した後は意識はあるか、呼吸をしているかなどの生態反応を確かめ、呼吸があれば水を吐くように身体を横向きに寝かせて、毛布や上着などで保温して様子をみながら救急車の到着を待ちます。しかし、もし呼吸がなければ人工呼吸を、さらに脈拍が触れなければ心臓マッサージを行なうという心肺蘇生をバイスタンダーがただちに行なう必要があります。

バイスタンダー(Bystander)のとは「その場に居合わせた人」という意味です。溺水事故のように心肺停止状態で発見されることの多い事故においては、このバイスタンダーの役割は非常に重要です。心肺停止状態に陥った人を救うには、出来るだけ早くに心肺蘇生を開始することが必要です。これには「蘇生」という目的とともに、「脳に酸素を送り続ける」という目的もあるのです。脳細胞は不可逆的で、酸素の供給が長時間止まり、細胞が一度破壊されてしまうともとに戻る可能性が非常に低くなります。呼吸が停止してから1分後に人工呼吸を始めると救命率は97%、2分後では90%、3分後では75%とのデータがあり(ドリンカーの救命曲線)、心肺停止状態で発見された人に、バイスタンダーができるだけはやく心肺蘇生法を行なうことがとてもとても重要なのです。 しかしアメリカに比べ日本では心肺蘇生の知識の普及が遅れているのが現状です。心肺蘇生法は決して特殊な技術ではなく、免許や資格も必要ありません。小学校3年生以上であれば、正しい知識と実技方法を学べば実施可能との報告もあります。正しい知識と少しの勇気があれば誰でも施行可能な事なので、大切な家族や尊い命を救うために、ぜひ機会を見つけて心肺蘇生法を学んでみてはどうでしょうか。  

記事提供:AXIS ATLANTA

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